ヨーロッパでは古くから、ブルーベリーの果実や葉のエキスが、壊血病や泌尿器疾患、糖尿病などの治療用いられてきました。日本人にとってブルーベリーは、せいぜいジャムとして目にするくらいで、どちらかというとなじみの薄い食物でしたが、数年前にテレビで「目に良い」と紹介されたことがきっかけで、にわかに注目されるようになりました。
【効能発見のきっかけ】
ブルーベリーの目に対する効用が初めて注目されたのは、第2次世界大戦中のことでした。
当時、英国の空軍に、ブルーベリージャムに目がないパイロットがいて、パンを食べる都度に、ジャムをたっぷり塗ることを欠かしませんでした。そのパイロットが、夕暮れ時や明け方の飛行から帰ってきた際に、「薄明りでも物がはっきり見えた」と証言したというのです。
この証言に興味を持った学者たちの研究によって、1960年代~70年代にかけて、ブルーベリーに豊富に含まれる天然色素成分のアントシアニンが、眼精疲労を軽減したり、夜盲症患者の視力を改善する効果を持つことが明らかにされていきました。こうした研究結果を受けて、イタリアやフランス、スペイン、ニュージーランドなどでは、アントシアニンが医療用医薬品として許可されています。
【アントシアニンの作用】
アントシアニンは、網膜上に存在するロドプシンという色素体の再合成に関与しています。水晶体を通じて網膜上に投影された映像を、電気信号に変換して脳に伝える働きを担うロドプシンは、光の刺激によって分解され、暗部で再合成されるというサイクルを繰り返しています。
ところが、パソコンのモニターを長時間見るなどして目が疲れてくると、ロドプシンの再合成が分解に追いつかず、必要量を維持できなくなってしまいます。またロドプシンは、加齢によっても減少します。その結果、目が疲れたり、見えにくくなるといった症状を引き起こすことになります。アントシアニンはこのロドプシンの再合成を促進することにより、目の症状を改善するのです。この他にもアントシアニンには、毛細血管の保護・強化作用、抗潰瘍作用、循環改善作用、抗炎症作用などがあることが確認されています。また、強力な抗酸化作用を持つことから、米国ではアントシアニンに関して、ガンや老人の認知症予防効果を示唆する研究結果も報告されています。
【品種で異なる含有量】
さまざまな効用を持つアントシアニンですが、野生種や栽培種というブルーベリーの品種によって、その含有量が異なることが知られています。ブルーベリーの中で最もアントシアニンを多く含むのが、ビルベリーと呼ばれる野生種で、100g 当たり350mg 前後のアントシアニンを含有しています。1日当たり120g 以上のアントシアニンを摂取すれば眼精疲労などに効果があるとされているので、30~40g も食べると十分といえます。
ただし、日本で生食用やジャム、ジュースとして流通しているブルーベリーは、野生種よりもハイブッシュ系やラビットアイ系など栽培種の法が多く、これらのアントシアニン含有量は、ビルベリーの半分かそれ以下なので、生食なら100g 程度を摂るのが理想的といえます。
なお、アントシアニンは熱変化に強く、加熱・冷凍しても成分はほとんど変化しないため、ジャムとして食べても効果的です。アントシアニンの効果は、食後4時間ほどで現われて24時間後には焼失するとされているので、一度にたくさんのブルーベリーを食べてもあまり意味がありません。保存がきくジャムやジュースなどにして、毎日少しずつ摂ることをおすすめします。
(参考:NOKKEI Drug Infomation)
![]() 依存症 |
![]() 病気・養生・その他 |
![]() ゴマの効用 |