【インフルエンザウィルス】
インフルエンザウィルスはグラム陰性桿菌であるヘモフィルスインフルエンザで、19世紀末にインフルエンザ患者から分離され、インフルエンザの病原菌と誤認されました。その後、インフルエンザの病原体はウィルスであることが判明しましたが、本菌が呼吸器やそれらに連結した部位での感染を引き起こすので、菌名として残されました。特に、慢性気道感染症の憎悪時やウィルス感染後の2次性気管支炎および肺炎の起炎菌として最も頻度が高いとされています。
インフルエンザウィルスは発育に血液中に存在する物質を必要とすることから、「血液を好む」という意味の「Haemophilus」という属名がついています。インフルエンザ菌は上部気道に常在する菌種の1つで、赤痢菌、レジオネラ菌のような細胞内寄生菌であり、上部気道の上皮細胞内へ浸入した状態で常在しています。下気道感染症
発症のメカニズムとしては、インフルエンザ菌の浸入した上気道の上皮細胞が下気道に落下し、下気道の上皮細胞上で定着、発症すると考えられています。
インフルエンザ菌が原因で発症する感染症には、乳幼児に急性化膿性髄膜炎、急性咽頭蓋炎、成人には肺炎、咽頭炎、慢性気管支炎などがありますが、特に、慢性気管支炎に伴う気管支拡張症や、高齢者などに肺炎を起こすことが多いことが知られています。症状は発熱、悪寒、呼吸困難、咳、膿性痰、胸痛など、他の細菌性肺炎と同じです。
【呼吸器感染症】
呼吸器(気道)は外界の病原菌が常に入り込む器管で、防御機構(咳、繊毛運動など)も発達していますが、呼吸器感染症は病原菌が防御機構を乗り越えて気道から浸入して引き起こされます。感染部位、患者の状態によって病原菌の種類に特徴があり、それらに合わせた適切な治療が必要です。これらの病原菌で主要なものは、インフルエンザ菌、肺炎球菌、クラミジア、マイコプラズマ、レジオネラ属菌などです。
呼吸器感染症は日常の生活で最も頻度の高い疾患であり、特に空気の乾燥する冬に多く発生します。いわゆる風邪症候群から急・慢性気道感染症、肺炎など、幅広くいろいろな病態を示します。日本における肺炎による死亡率は、悪性腫瘍、心疾患、脳血管障害の三大死因に次いで、第4位を占め、高齢者の肺炎による死亡率は年々高くなっています。
呼吸器感染症の治療は、まず、確実な起因菌を把握して、これに合わせた的確な治療を行う必要があります。それには、細菌検査などが行われますが、実際には急を要することもあり、抗菌薬の選択が重要となります。通常は患者の症状から治療経験などを踏まえ、診断、起炎菌の予測を行い、適切な抗菌薬を選択、投与し、治療経過の観察、検査結果の確認をまって、治療を終了するか、あるいは抗菌薬の変更を行います。
(参考:PHRMAVICION VOL.5)
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