ストレスと七情

「ストレス」という言葉をはじめて医学用語として用いたのは、カナダのハンス・セリエ博士で、1936年のことです。

中国では、精神と肉体は一つであると昔から考えてきたので、ずっと古い時代から、すでにストレス学説と同じ考えかたに立って医療が行われてきました。

中国では、精神的な情緒の変化を7つの要素に分けて、これを「七情」といい、度を過ぎると病気を起こす原因になると指摘しています。

七情は、怒、喜、憂、思、悲、驚、恐のことをいいます。

七情は、内臓の働きに影響を与える作用があり、およそ次のような関係となります。

は、五臓の「肝」を傷め、逆に「肝」の働きが鬱滞すると怒りやすくなります。いわゆる「ストレス」は「肝」と深いつながりを持ちます。

は、本来はよい情緒状態ですが、度が過ぎると心臓や脳を表す五臓の「心」の変調を起こします。たとえば宝くじに当たって卒倒するようなことです。

いや思いは、消化器系(五臓の「脾」)を傷めやすく、度が過ぎると、食欲不振などが怒ります。失恋して憂いが深まると、ご飯が喉を通らなくなったりします。

しみは、呼吸器系(五臓の「肺」)を傷めます。

上記の五臓は、古代中国の内臓理論ですので、現代の内臓の考え方とだいぶ相違があります。

ストレスと特に関係が深い内臓系は、五臓のうちの「肝」と「腎」の二臓なので、この二臓について書きましょう。

「肝」は今日の肝臓にかなり近い内臓系で、血液を貯蔵して、その血液を浄化し栄養を与え、そのきれいで栄養豊かな血液によって、脳、目、筋肉、爪を養い、身体のあらゆる生理機能に必要な栄養を供給するという作用が考えられていました。精神的なストレスが異常に強いと、脳は酷使されます。その脳の活動を支える「肝」は、大量のきれいで栄養のある血液を脳に送り続けなければならず、それがオーバーヒート状態に陥るようになると、脳の活動が悪くなり、思考や判断が狂うようになります。これがストレスに負けた状態で、イライラして怒りやすく、あるいは落ち込み、不眠などの精神神経の不安定な症状があらわれてきます。このような場合、必ずしも肝機能検査に異常があるとは限りま
せん。

一方、「腎」は今日の泌尿・生殖器やホルモン系などの内臓機能に相当する作用を持つ内臓系で、ストレスが高じてインポテンツになったり、無気力になった状態が「腎虚」といわれます。

最近は、ストレスによる血行障害も重視されています。狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などがその主な物です。

「肝」「腎」などにストレスによる症状があらわれたときには、精神安定剤を服用される前に、もっと安全で根本的な治療法、予防法(漢方による)がありますので、医師または漢方薬局の薬剤師に相談なさって下さい。

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