生体リズム

体内時計の発見

ドイツのアショフ教授が1960年代前半に、人は光も音も遮断された洞窟のような暗闇で生活していると1日が25時間のリズムになることを発見し、これを身体の内的時計としました。

また、東京大学の程博士は、1997年に人の第17番染色体には、時計遺伝子があることを発見しました。この発見により、人は1日の時間観念が、予め遺伝子にプログラムされたものであるということが照明されたのです。日本人の平均睡眠時間は、約7時間ほどが1番多いとされていますが、8時間眠らないと眠り足りない人や、逆に6時間寝れば十分という人もいます。これも、遺伝的に備わっているものと考えられます。ある実験で、もともと8時間睡眠だった人に、6時間睡眠で半年過ごしてもらったところ、そのときは6時間睡眠でも大丈夫だったのに、実験が終わって1月後には8時間睡眠に戻ってしまったということです。このことからも、睡眠時間は人それぞれに決まっていて、人為的には変えられないものであることがわかります。

生体時計の調整

人は、太陽の運行からなる1日24時間という外的時計(体外時計)と、遺伝的に備わった25時間という内的時計(体内時計)をうまく調和させて、それぞれの生体時計を作っています。

生体リズムを作る

まず、朝起きて太陽の光が眼から入ってきます。太陽の光は、だいたい10万ルックス(日当たりの良い窓辺の明るさ)ほどあります。太陽の光を浴びることで、25時間である体内時計は1時間早くリセットされ、体外時計と同じ24時間になるのです。

さらにこの光は、電気信号に変えられて、網膜から脳の視床下部の下にある視交叉上核に達します。ここは時計遺伝子が存在している箇所です。さらにその刺激は松果体に達し、そこでアミノ酸の一つであるトリプトファンから、メラトニンというホルモンが作られます。このメラトニンは、時計ホルモンと呼ばれています。メラトニンは、約14時間後に眠気を及ぼしてくれるホルモンで、血流に乗って身体の隅々まで時間の情報を運んでいきます。一般的に、メラトニンの濃度は夜中の3時頃にピークを迎え、朝が近づくにつれてだんだん低下していきます。そして、朝太陽の光を目にしたとたん、メラトニン濃度は一気に減少します。お昼ごろには最低値となり、それからまただんだんと上昇していきます。

朝型人間

朝はいくら早くても大丈夫だけど、夜は早く眠ってしまうタイプです。このタイプの人は、陽気で病気になるのも少ないと言われています。アメリカのハワード・ヒューズ研究所で、家族性睡眠相前進症候群(早起き家族)には、hPer2という時計遺伝子があることが発見されました。

夜型人間

反対に、夜中まで起きていても平気だけれど、朝はめっきり弱い夜型人間は別名睡眠相後退症候群と呼ばれ、睡眠・覚醒リズムが遅れている人を指します。夜型の遺伝子はまだ見つかっていませんが、宵っ張りが遺伝であることは大いに考えられることです。また、子供の登校拒否やひきこもり、大人の出社拒否症にはこのタイプの人が多いといわれています。

生体リズムと病気

疾患には、発生しやすい時間帯があることが、だんだんわかってきました。例えば、急性心筋梗塞は朝起きてから2時間以内が一番発症しやすいのです。それは、人を活動に導くホルモンであるカテコールアミンが増えて脈拍数が急に増え、それと同時に血圧を上げるホルモンのレニンも急に増えるために血圧も急に上がることになります。すると、血管の内側に力が加わって傷がつきやすくなり、その傷を治そうとして血液が固まります。そのときにできるのが血栓です。その上朝は、脱水症状に近い血液状態を起こしている場合が多く、血液の粘度も増しているので、余計に血液は固まりやすくなっています。そこでできた血栓が大きくなって血管を塞ぎ、その先の心筋へ酸素が届かなくなっていまうのです。

その他にも、気管支喘息は夜明け前、脳卒中は夜中に起こりやすいことがわかっています。

(参考:生体リズム健康法 田村康二著)

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