白血球と自律神経

私たちの体はたくさんの細胞から成り立っていますが、それらが勝手に働いているわけではなく、お互いに協力しあって働くようになっています。この働きを無意識に統一しているのが自律神経です。自律神経は交感神経と副交感神経からなっていて、例えば運動する時は交感神経が働いて心臓の働きを強め、呼吸を早くして消化管の働きを抑制します。このような刺激は、副腎の出すアドレナリンや交感神経自身の出すノルアドレナリンによって媒介されています。逆に休息のときや食事のときは、副交感神経が心臓の働きや呼吸を穏やかにし、分泌減少を促進して消化管の蠕動運動を活発にします。そして、このような副交感神経の刺激はアセチルコリンによって媒介されています。

この数年の研究で、血液中を循環する白血球が自律神経の支配を受けていることがわかってきました。白血球の細胞膜上に交感神経の刺激を受け止めるためのアドレナリン受容体や、副交感神経刺激を受け止めるためのアセチルコリン受容体を持ち、自律神経支配を受けていることが明らかになったのです。

白血球には大別すると顆粒球とリンパ球がありますが、顆粒球は細胞を貪食して処理し、リンパ球は抗体などを産生して免疫を作って体を守っています。このような顆粒球やリンパ球はマクロファージという白血球の基本細胞から進化した分身たちです。顆粒球は主に交感神経支配を受けて活性化し、逆にリンパ球は副交感神経支配を受けて活性化しています。このような白血球の自律神経支配は、多くの場合、体にとって有利な反応ですが、あまりに反応が一方的になると、病気を引き起こすことになってしまいます。

気圧の年内変化と白血球

北半球の地域にある日本では、冬は高気圧で夏は低気圧となっています。冷たい空気は重く高気圧になり、雲はできないにのでお天気となります。暖かい空気は上昇し低気圧となり、上昇気流は雲を作り雨を降らせるのでお天気は悪くなります。冬になるとシベリアに高気圧が出現し、夏には南に低気圧が発生して台風がやってきます。夏にできる太平洋の高気圧は相対的なものでたいした高気圧ではありません。

4月から6月にかけて気圧が急激に低下します。そしてこの変化は人の体調を交感神経優位から副交感神経優位に変化させます。このためリンパ球が増加し、リンパ球の炎症の頻度が高まります。これが春の花粉症の時期です。リウマチの人の関節痛もこの時期に悪化します。逆に、9月から11月にかけては気圧が急激に上昇するので、この変化は人の体を副交感神経優位から交感神経優位に変化させます。このため顆粒球が増加し顆粒球の関与する組織傷害の病気の頻度が高まります。心筋梗塞や脳卒中を起こすやいのもこの時期です。

冬に風邪を引きやすいのも、気圧と白血球の関係で説明ができます。冬は気圧が高くなるためにその寒さとともに交感神経緊張状態にして、顆粒球増加、リンパ球減少の状態になっています。この状態で寒さにさらされうると、さらに組織(特に扁桃や気道など)の血流不全が起きて風邪ウィルスの増殖する体内環境が整います。

このように季節の移ろいによる気圧の変化が自律神経に影響して様々な疾患の原因になることがわかると、病気の予防や対策を講じる指標となるものと思います。      (参考:安保徹著 医療が病を作る)

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