自律神経と呼吸

健康で長生きしたいという願いは、誰でも望むことです。正しくバランスのとれた食生活と、毎日続けることが望ましい運動、それに心が整えられた平常心、即ち心身の調和こそが大切だと言われますが、もう一つ大切なことは、呼吸を調えるということが加えられ、ヨガ、気功、太極拳などは呼吸が基本の中心となっています。

自律神経は自動的にコントロールされているのですが、その中で唯一コントロールできるものが、呼吸です。通常、呼吸は無意識に行っているのですが、その速さや回数を自分で意識的にコントロールすることもできます。意識せずに行っている呼吸を、意識的にコントロールすることによって、無意識に自動的に作動している自律神経に、直接働きかけてバランスを調整していくことができるということが、次第に解明されつつあります。

私たちは疲れてくると呼吸が段々浅くなり、心が動揺している時や腹の立っているときは、呼吸は荒々しくなります。自律神経が乱れ、アンバランスになっているときは、たいてい肩で浅い呼吸をしています。アトピー性皮膚炎で、痒みの強いかたは、不眠が続くと自律神経をさらに弱らせることになります。反対に心のおだやかなときには、静かな深い呼吸をします。

人間の呼吸数は安静時には1分間に17~18回位が平均値だといわれますが、座禅などで精神を安定させているときには、1分間に4~5回だそうです。

浅くて力のない呼吸をしていると、吸い込んだ空気が肺の中まで達しないままで吐き出され、炭酸ガスを含んだ、汚れた空気はそのまま肺に残っているので、血液の循環も思考力も低下してしまいます。

「癒す心、治す力」の著者であるアンドルー・ワイル氏も呼吸法を提唱しておられますし、その呼吸法をわかりやすく簡単に説明された本がありましたので、その「自律神経を安定させる呼吸法」の部分を書き出してみます。本は大塚晃志郎著「きっと治る」です。

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呼吸というものを通じて、自律神経の調整を行おうとする場合、吐く息を普段とは逆に、意識的に長くするのがコツです。まず、十分におなかの底から吐く。十分に吐ければ、自然に空気が肺に入り、より一層酸素を血液に取り入れることができます。呼吸を意識的にコントロールすることによって、さまざまな生理作用が生じるとともに、心理的作用も生じます。

まず、吐くこと、長く十分に吐ききること。吐くときに、心の中のもやもや、イライラも吐き出すようなつもりで行うと、それは、一種の効果的なイメージ療法にもなっています。吐くと同時に、マイナスの感情も全部吐き出すつもりで行うと、ますます効果的です。

アンドルー・ワイル博士が患者さんにすすめている呼吸法を皆さんにご紹介したいと思います。

1).まず、おなかに重心を落とし、口から音を立てながら息を十分に吐ききります。
2).次に、鼻からゆっくり数を1,2,3,4と数えながら吸います。十分に吐けたなら、自然に空気が入ってきて吸えますから、気張って吸い込もうとしなくとも大丈夫です。
3).吸ったところで、息を止めます。そして1,2,3,4,5,6,7と数えます。これで肺のすみずみまで、酸素が行きわたることになります。
4).7まで数えたら、こんどはゆっくり口から音を立てながら1,2,3,4,5,6,7,8と数えながら息を吐いてゆきます。8という数には、それほどこだわらず、吸った時より、吐く息を十分長く、というのがコツです。
5).1~4のプロセスを4~5回繰り返します。これが1ラウンドで、この呼吸法を1日最低4~5回繰り返します。

ただこれだけです。日常生活の中で、この呼吸法を習慣にしていると、自律神経の働きをその場で調整する抜群の効果があります。
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ゆったりとした長い呼吸を繰り返すことは、効率よく酸素を取り入れて、炭酸ガスを交換できるので、血液の流れも良くなり、血圧の上昇を防ぎ、細胞が活性化して、新陳代謝を助ける役割もしてくれます。その上、自律神経を安定させ、緊張やイライラをしずめ、心の安定にもつながりますので、私たち現代人にとって、正しい呼吸法は大切なことだと言えるでしょう。

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