自律神経と気圧

自律神経は心臓や胃腸、血管、内分泌腺、汗腺など、体の各気管の働きを調節する神経です。脳の指令を受けず独立して働くことから「自律」という名がついています。寝ている間も心臓が休みなく働くのは、自律神経が心臓の働きをコントロールしているからです。

自律神経には交感神経と副交感神経の二つがあり、互いに拮抗するように働いています。交感神経は活動にかかわる神経であり、エネルギーを消費させる働きを持っています。主に日中の活動時に優位に働き、心臓の拍動や血圧、体温などを上げ、仕事や勉強、運動などをスムーズに行えるように体の働きを調整しています。交感神経が優位に働いているときには、心のほうも気が張った状態になります。緊張して事の成り行きをうかがっているときに「固唾を呑む」「手に汗握る」などといいますが、これは交感神経が緊張して唾液の分泌を抑えたり、汗の分泌を促すために起こる生理現象です。

一方の副交感神経が優位のときには、心臓の鼓動は緩やかになり、腸の蠕動運動が活発になって食物の消化が促されます。血管が拡張して血液循環も良くなり、臓器の排泄・分泌能が高まります。気分はのんびりと和み、全身がリラックスモードになります。リラックスして笑いすぎたときに涙や唾液が出るとがありますが、これは副交感神経が臓器の分泌能を活発にしているためです。自律神経の針は、この交感神経と副交感神経の間で絶えず振れています。ただし振れ方に一定のリズムがあり、昼間は交感神経寄りに、夜間は副交感神経寄りになります。

各器官の働きを調整する際、交感神経はアドレナリン、副交感神経はアセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質を神経の末端から放出します。アドレナリンは心臓の鼓動を速め、血管を収縮させて血圧を上げるなど、体のスイッチを緊張・活動状態に入れる作用があります。アセチルコリンは心臓の鼓動を遅くし、血管を拡張して血圧を下げ、体のスイッチを休息状態に入れます。また、臓器の分泌・排泄能を促す作用もあります。

自律神経のネットワークは全身に張り巡らされており、生体が外部環境の変化に即時に対応できるように体内環境を調整しています。気温が高くなれば汗が出て、寒くなると鳥肌が立つというのも、自律神経が気温の変化に対応して体温調節を行っているからです。気圧の変化に対しても、自律神経は敏感に反応します。

高気圧とは空気中に酸素がたくさん含まれている状態です。エネルギーを燃やす材料の酸素が豊富にあると、交感神経が優位になって体のエネルギーの代謝量を上げます。そのため晴れた日は人は積極的に活動するようになるのです。

一方の低気圧ではこれと逆の現象が起こります。空気中の酸素が少ないため、副交感神経が優位になって、生体のエネルギー消費を抑えます。曇りがちな日や梅雨時に、やる気がでない、体がだるいなど体調が変化するのは、副交感神経の働きで呼吸や脈がゆるやかになるからです。
(参考:刺絡療法 福田稔著 マキノ出版)

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