漢方治療の立場では、低血圧、貧血、冷え性は、ほぼ同レベルで捉えることができます。低血圧も貧血も血行不良であったり、血液成分が薄かったりで、全体として疲れやすく、朝は起きづらく、特に下半身が冷えやすく、冷えのために寝付きが悪くなることもあります。風邪などもひきやすく、一度かかると治りにくいことが多いようです。
漢方的に分類してみると、次の4つに分けて考えられます。
1.婦人科系の働きが悪い場合
2.胃腸虚弱の場合
3.血液成分が薄く全体に気力不足の場合
4.腎機能が弱く水毒がある場合
1.の場合
婦人科系の働きが悪い場合は、多くは生理不順や生理痛を伴い、生理時もしくは生理後に貧血症状を起こし、めまい、頭重、耳鳴り、下腹部痛、顔面蒼白となり、時には頭痛、肩こり、吐き気を伴うこともあります。精神不安も起こしやすくなります。
子宮筋腫のある場合は不正出血があったり、生理時の出血が多く、一層貧血状態はひどくなります。また、一般的に生理中、生理直後に風邪をひきやすくなります。
この場合に用いる主な漢方処方としては、
・当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
・四物湯 (シモツトウ)
・桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
・当帰四逆加呉茱萸生姜湯 (トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)
などがあります。
2.の場合
胃腸虚弱の場合は、体質的に胃下垂症であったり、胃腸過敏で冷えたり、精神的ストレスが加わるとすぐに下痢をしやすい状態です。やせ形が多く肥満型は少ないようです。顔色に艶がなく、青白いか、青黄色で、朝は起きにくく疲れやすいタイプです。
この場合に用いる主な漢方処方としては、
・人参湯 (ニンジントウ)
・六君子湯 (リックンシトウ)
・補中益気湯(ホチュウエッキトウ)
・小建中湯 (ショウケンチュウトウ)
などがあります。
3.の場合
血液成分が薄く、気力不足の場合は、再生不良性貧血や白血病、悪性貧血など血液そのものに問題があります。この場合は一旦出血すると止まりにくく、皮膚に紫斑ができやすく、顔色は精気なく、疲れやすく、発熱しやすいのが特徴です。
この場合には、
・十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)
・加味帰脾湯(カミキヒトウ)
・補中益気湯(ホチュウエッキトウ)
などが用いられます。
4.の場合
腎機能が弱ると水分の代謝が悪くなり、むくみやすくなります。このような状態になると、夜間排尿が多くなり、腰から下腹部、下肢にかけて冷えるようになります。
この場合に用いる主な漢方処方には
・苓姜朮甘湯 (リョウキョウジュツカントウ)
・真武湯 (シンブトウ)
・柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)
などがあります。