中国では寒、涼、 温、熱以外に、食養生として次のような分類をしています。
1.身土不二(しんどふじ)
2.一物全体(いちぶつぜんたい)
3.陰陽補瀉(いんようほしゃ)
身土不二とは「その人が生まれ育った国や地方でできた食べ物が、その人の身体に最もふさわしい」という意味です。地球上のどの国にも固有の民族食があり、その食べ物を数百年食べ続けてその民族が繁栄していれば、その食体系は正しいということになります。しかし、日本の食糧自給率はすでに20%を割っており、私たちにとって身土不二の実践は難しいものとなっています。
この対応として、旬を重んじたり(作物、収穫物、漁獲物には必ず最盛期があり、そのときが最もおいしくて栄養も豊富です)、できるだけ近郊農家で採れた野菜や、国産の食べ物を大切にいただくことを心がけたいものです。一物全体とは「一つの食べ物は食べられる部分を全部食べる」という意味です。魚なら頭、尾、骨、皮、内臓など食べられるところを全部食べるということで、マグロのように大きい魚の一部分しか食べないというのはバランスを欠くということになります。根菜類なら根だけでなく葉も全部食べるということです。
陰陽補瀉とは漢方で使われる陰陽とは少し違い、「食べる人の体質、季節食事時間などにより、陰陽のバランスをとる」ということです。例えば、肉(陽)があれば野菜(陰)を加え、サンマ(陽)には大根おろし(陰)を添えるようにすることです。
暑い夏(陽)にはトマトや生野菜を多めに摂ってもよいが、寒い冬(陰)には身体を暖める温野菜や鍋物(陽)のほうが良いのです。
身体を冷やす働きのある果物(陰)は、陽が照っている朝から昼過ぎ(陽)までに食べ、身体の弱っている人や老人(陰)には、身体を暖める料理法(陽)が良いと言う考え方です。
以上の三つの考え方は、現代では汚染の問題や日本の食料事情から、実践が難しい状況になっていますが、皆さんの食生活を考え直す時の参考になさってください。