近年、めまいを訴える患者さんは、社会機構の複雑化、ストレスの増加、高齢化社会の推移に伴って増加の傾向があるという報告があります。
めまいは西洋医学的には、平衡障害の全身的感覚とみられており、前庭迷路、視覚、四肢自己受容器からの情報が中枢神経で統御さ、れ、視器、四肢の筋肉、自律神経系に反射する体系の異常によって誘発されると言われています。
一方、漢方医学的には、めまいは水(津液)が体内に貯留し、偏在する病態、すなわち水毒によるものが最も多いとされており、メニエール病のような内リンパ腫はこの病態によるものとみられています。もちろん、水毒以外に血毒、気毒も関与していると考えられます。
以下に多く使われる処方を挙げてみます。
1.苓桂朮甘湯(レイケイジュツカントウ)
虚証及び中間証。軽いのぼせがあり、腹力が弱く胃に振水音がある。起立性のめまいにも良い。
2.半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)
虚証。尿量が少なく、腹力低下、吐き気を伴うこともある。
3.真武湯(シンブトウ)
虚証。四肢が冷え、下痢しやすい。新陳代謝も衰え、ふわふわしためまい。
4.当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
虚証。冷え性で月経不順、月経痛がある。
5.加味逍遙散(カミショウヨウサン)
虚証及び中間証。冷えのぼせがあり、頭痛、肩こり、月経不順を伴い、性格は神経質で不定愁訴が多い。
6.釣藤散(チョウトウサン)
中間証。肩こり、のぼせ、頭痛、眼球結膜充血、耳鳴りを伴い、高血圧気味。
7.黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)
実証。のぼせ、顔面紅潮、高血圧気味。
8.三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)
7.と同じような症状で、便秘を伴う場合。
9.桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)
実証。赤ら顔、のぼせ、イライラ、不眠、腹部左下に抵抗圧痛が
ある。
10.柴胡加竜骨牡蠣湯(サイコカリュウコツボレイトウ)
実証。精神不安、不眠、心悸亢進を伴う。
11.小柴胡湯合香蘇散(ショウサイコトウゴウコウソサン)
中間証及び虚証。耳管狭窄、耳管や鼻腔の炎症を伴うもの。
12.五苓散(ゴレイサン)
中間証。口渇、尿量減少のある場合。