ストレスと肝臓
漢方医学の考え方で、五臓のうちの肝は今日の肝臓の働きとほぼ同じと考えられていて、ストレスを受け止める働きと、目に栄養を送る働きが重視されています。
私たちは、血液というと心臓にあると考えますが、心臓は血液に関しては循環の役割が主で、血液の質や体内への配分はむしろ肝のほうが主に受け持っています。
肝は血液のプールになっていて、人が体を休めていると、血液は肝というプールに帰ってきます。このとき、体内からゴミを集めて戻ってきます。
肝は、血液が運んできたゴミを処理してきれいな血液にし、栄養を与えて蓄えます。そして、人が体を動かしたり、ものを考えたりしてエネルギーが必要となると、肝に蓄えられていた血液が、必要なところに出かけていき、栄養と酸素を供給します。
脳は、肝臓にとっては血液供給先です。特に精神的ストレスで脳が酷使されると、大量の血液が必要となり、肝臓の負担が大きくなります。肝臓の働きが良い人は、血液の供給力が大きいので、脳はかなりの酷使に耐えられます。しかし肝臓の能力が小さいと、脳は疲れやすくなり、思考力が散漫になり、イライラして怒りやすく、睡眠にも影響して寝付きが悪く、眠りが浅くなるなどの症状が現れ、ストレスにも弱くなります。
夜は、普通は体が一番休まるときですから、肝には血液がたくさん帰ってきて、ゴミの処理がよく行われます。夜の眠りが浅いと、こうした肝の働きが不十分となり、血液のゴミを取り除く作業が滞り、血液が汚れ、血行も悪くなります。ストレスは、こうした悪循環をもたらすことになります。
月経と肝の働き
月経の周期が不順、生理痛が強い、月経の前になると、気分がイライラしてヒステリックになる、乳房が張るなどの症状があるときは、漢方医学では肝臓に異常な緊張があるとして治療を行います。
漢方薬による治療は、ストレスに弱い人、怒りっぽい人を含め、急にのぼせて汗ばむような人には加味逍遙散、イライラが強いときには抑肝散などを用います。目の疲れには、杞菊妙見丸が効果的です。