1.「好き」「楽しい」ことを実行する
人間の脳細胞は胎児の間は増殖しますが、誕生してからはその数は増えないばかりか、脳の神経回路が完成する20歳を過ぎると、1日に十万個もの神経細胞が死滅していくといわれてきました。ところが最近の研究で、大脳辺縁系にある海馬部分の神経細胞は歳をとっても増殖することが発見されました。さらに刺激のある生活を送っている人の海馬の神経細胞は、減少するよりも増殖する数のほうがまさり、記憶力も高まることが報告されています。また、海馬の神経細胞を増やすには、「好き」なことや「楽しい」ことが有効であることがわかっています。
2.左右の脳をバランスよく使う
人間の脳は右脳、左脳に分かれていて、それぞれ異なった役割を担っています。左脳は本を読んだり、文字を書いたり、計算するときに使われる脳で、デジタル脳とも呼ばれます。右脳は空間や図形認識、直感、音感に優位な脳で、アナログ脳とも呼ばれています。情報を収容する能力が高い左脳人間は、常識をわきまえ社会性には富みますが、応用がきかず創造性に欠ける面があり、右脳人間は、感情豊かで直感力にすぐれるものの、協調性を欠く傾向にあります。いずれも長所短所があり、どちらが良いというものではありません。脳の老化を防ぐには、左右の脳をバランスよく使うことが大切です。
体の半分は左脳が、左半分は右脳が支配しています。ということは、右脳を刺激するには左手を使うことが勧められます。もし、右利きの人が利き手ばかりを使っていては、右脳と左脳のバランスがうまく保てないことになります。
また、右脳を効果的に働かせるには音楽を聴いたり、自然界の風のそよぎや小鳥のさえずりなどを耳にするのもお勧めです。
3.計算ドリルに挑戦する
書店で大人向けの計算ドリルも見かけるようになりましたが、簡単な計算や音読を継続することで、脳の働きが高まり記憶力も高まることが報告されています。
4.家の中は素足で歩く
素足で歩くと足からの刺激が背筋を通ってそのまま脳への刺激になり、脳を活性化します。足の裏には脳をはじめとする体の器官に刺激を与えるツボが集中しているので、素足で歩くことで、より足裏に刺激が与えられ、脳や内臓への各器官への刺激になります。また、素足でなく歩くこと自体も脳への刺激になるので、ウォーキングは脳の活性化にはとてもよいことです。
5.夜型でなく、朝型に
夜は精神的にも肉体的にも疲れがたまり、脳の力が低下します。脳のためには夜更かしすることより、早く寝て、翌朝活動するほうが望ましいといえます。
人間の知的作業の能率や運動機能は1日を通じて必ずしも一定ではなく、脳内にある「体内時計」で制御されており、これには体温の上昇が深いかかわりを持ちます。
人間の平均体温は36℃で、午後2時ごろにピークを迎え、午前4時ごろ最低になります。エネルギーが燃焼するとき体温も上昇し、脳による体の機能も活発に働きます。ですから、体温が上昇する時間帯に作業をすれば能力アップがはかれることになります。
6.恥ずかしいという気持ちを捨てて、好奇心を旺盛に
大人になると知らないことを恥ずかしく感じたり、他人に聞く事を恥と考える人もいるようです。わからないことに興味を持ち、調べることを実行する人は好奇心が旺盛といえます。好奇心は脳の細胞を活性化するのに欠かせないもので、それが無くなると、脳の老化はどんどん進行してしまいます。
7.ストレスを抱え込まない
まったくストレスのない生活を送っている人は、ボーっとして、反って脳を退化させてしまいます。そのため、脳にとってはある程度のストレスや緊張感は必要といえます。しかし、過度のストレスや、長期間にわたっての強度のストレスを感じることは、脳にもよくありません。
人はストレスを受けると、大脳辺縁系に異常な興奮を起こします。すると血管が収縮し、心臓に負担がかかり、血圧が上昇するなど、ストレスに対する特有の症状が体に表れてきます。この状態が日常化すると、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を起こしたり、悪いケースでは脳卒中や心筋梗塞による突然死を招きます。脳の老化を防ぐにはストレス解消がとても重要なことです。
8.アルコールはほどほど
アルコールと記憶力の関係を調べた結果、アルコールは少量でも記憶力を低下させることがわかりました。脳には異物の混入を防ぐ「血管脳関門」という防御システムがあるものの、アルコールはこの関門を通り抜け、脳にダメージを与えてしまうのです。
脳の神経細胞は刺激を電気に変えて情報の伝達を行いますが、アルコールは神経細胞の絶縁体に当たる部分を溶かし、神経伝達物質に直接影響を及ぼすので、脳の情報伝達は混乱を起こしてしまうのです。これがいわゆる「酔った」状態です。
少量のアルコールは体にもよいとされますが、日本酒5合を20年間、毎日飲酒していると、神経細胞は確実に破壊され、脳の2割から3割が萎縮し、記憶障害を起こしやすいことが報告されています。
9.噛むこと
最近の若者はハンバーグやスパゲティ、インスタント食品など、軟らかくて食べやすいものを好む傾向にあり、あごが退化した小顔の若者が増えています。
あごの退化は脳の退化を引き起こす可能性があります。なぜなら、人類は噛むことによって脳を巨大化させ、次いで言語を取得し、前頭葉を発 達させた歴史を持つからです。噛むことは脳によい刺激を与える効果があるので、硬い物をよく噛んで食べることが大切です。
10.スキンシップ
人間の脳は常に刺激を求め、快感も求めています。赤ちゃんが母親にスキンシップを求めるのはそのためですが、スキンシップは赤ちゃんだけではなく、大人にもお年寄りにも必要で重要なものです。
脳はスキンシップ以外にも五感によって刺激され、活性化されます。五感とは、「視る(視覚)」「聞く(聴覚)」「嗅ぐ(臭覚」「味わう(味覚)」「触れる(触覚)」で、触覚がいちばん早く人間の感覚としてできあがります。
人間の皮膚の表面にはリセプター(感覚受容器)と呼ばれる情報の受け皿が無数にあり、皮膚に触れ、リセプターを反応させることで刺激が脳に伝わり、大脳が活発に働くようになります。この感覚を刺激しない日々を過ごしていると反応が鈍くなり、脳細胞はどんどん死滅してしまいます。
11.人とのコミュニケーション
動物も人間も三大本能は共通しています。それは「食欲」「性欲」そして「群れる欲」です。ずっと会社人間で生きてきた人が定年退職し、会社の人間関係も切れ、地域社会にも溶け込めずにいて、人づきあいが急激に途絶えたとたん、記憶力が低下したり、ひどい場合にはぼけてしまうことがあります。人と接触する機会が失われると、本能的な「群れる欲」が満たされないため、脳の活動が落ちてしまうのです。人とのコミュニケーションは脳をイキイキと活性化させ、表情も豊かにしてくれます。表情が豊かな人は、脳も活性化している人といえるでしょう。
(参考:ほんとうの時代 168号)
すべて実行を目指すのはたいへんですから、できるところからで良いと思いますし、私もそうしています