西洋医学は、主に病気や個々の外見的症候の除去と生命の保全を命題として、自然科学の理論を背景として発展してきました。
しかし、自然科学に基づくが故に臓器の局所的な病変分析や生体の化学的分析に終始し、個々の異常に対して局所的に対応することが多いのが現状です。
これに対して漢方医学は、全体的・総合的に病気を捉えて、「治すこと・癒すこと」を最大の目的として治療
を施してきました。
別の角度から見ると西洋医学では、X線検査、生化学的検査などの分析的手法により得られる情報により診断を下し、病名を決定し、その原因や症状を除去する複数の薬を処方します。
一方で漢方医学は病人個人の病態の分析を重視し、その病態に適する薬(通常は1種類多くて2種類)を処方します。
その結果、西洋医学的には異なる病気に対して同じ漢方薬が用いられることもあれば、風邪という病気ひとつとっても多種多様な処方があります。
この概念を示す「異病同治・同病異治」という言葉が漢方医学と西洋医学の違いを端的に物語っているといえるでしょう。
とはいうもののまだまだ正統な「証」に基づく診断で漢方薬を処方する医師がすべてではなく、病名と漢方薬を単純に結びつけて西洋薬のバリエーションとしてしか漢方薬が処方されない場合もしばしばのように思います。
すなわち、漢方薬を用いても必ずしもそれは漢方医療とはいえず、逆に漢方薬と西洋薬を併用していてもそれが漢方理論からの結論であれば、それは正しい漢方医療であるともいえるわけです。