漢方薬を服用するときには

漢方療法とは漢方薬を服用して病気を治すものと考えておられるかたが多いようです。

そこで、漢方療法の基本的な考えかたについて簡単に書いてみます。

たとえば、風邪を治す代表的な漢方薬は葛根湯です。この葛根湯は葛根(クズの根)、桂枝(シナモン)、生姜(ひねしょうが)、大棗(なつめ)、甘草(甘草の根)、芍薬(しゃくやくの根)、麻黄マオウの地上部)の7味から構成されています。

そして、このうち薬と呼べるのは麻黄と芍薬くらいで、他は薬というより食品に近いものです。

ほとんどの風邪はウィルスや細菌によって引き起こされますが、この葛根湯のなかにはウィルスや細菌を殺す抗生剤のようなものは、まったく含まれていません。

にもかかわらず、風邪の初期に熱い葛根湯を飲むと、1~2時間で身体が温まり、汗が出て、頭痛や肩こりがなくなってきます。

つまり、漢方療法の真髄は、生物なら必ず持っている自然治癒力をいかに引き出すかにあります。

そして、自然治癒力を利用するからこそ新薬に比べて副作用が少ないのです。

そこで、漢方薬を服用するときに、注意しなければならないことがあります。

漢方薬を服用することが漢方治療だとお思いのかたが多いのですが、漢方薬を服用するのは漢方治療の半分の行程にしかすぎません。

漢方薬を服用することが決して漢方治療のすべてではないのです。

残りの半分の治療とは、服用する漢方薬と病状に合わせて養生法を守ることなのです。

これがどういうことかと申しますと、前記の葛根湯の場合、暖かくした葛根湯を服用し、身体を温めるために、温かくて消化の良いうどんやおかゆなどを食べて、安静にしていることによって、葛根湯の発汗作用が活かされ、風邪が治癒するのです。

反対に、冷たい葛根湯を飲み、冷房の効いた部屋で冷たい食べ物などを食べたときには葛根湯の発汗作用は活かされません。

これは葛根湯が効果がないのではなく、効果の出ない飲み方をしたと言えるのです。

漢方薬を服用する場合、暖めて服用して効果を出す薬と冷たい水で服用したほうが効果の出る薬がありますので、処方した医師または薬剤師に、どのようにして服用したら良いか、それと生活面での養生法などを尋ねて下さい。

その問いに丁寧に、納得のいくように答えてくれる医師または薬剤師でしたら、ある程度漢方について勉強していると考えて良いでしょう。

反対に「食間に水で」くらいの答えでしたら、あまり勉強していないと考えられます。

これを皆さんが医師や漢方薬局を選ぶ基準になさるとよいでしょう。

漢方薬は新薬のように飲めば即効果が期待できる(例外もありますが)ものではありません。

また、漢方薬を飲んだから安心、と不摂生をしたのでは治るものも治らなくなってしまいます。

漢方治療は、このように薬や病状に応じて養生法を守らなければならない、という必要がありますが、病状に薬が合えば、副作用の心配もなく非常に効果的な療法となります。

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