唾液の働き

私たちの口の中は、常に唾液が分泌されていて、潤った状態にあります。この唾液の役目で一番良く知られているのは、ご飯やパンなどのでんぷん質を、唾液中に含まれる酵素であるアミラーゼが分解して麦芽糖に変え、吸収しやすい形にすることです。その他にも唾液はいろいろな役目をしています。

唾液の働き

1)消化作用:唾液中の酵素ででんぷんをマルトースに分解する
2)溶解作用:味物質を溶解して味覚を促進させる。
3)洗浄作用:食べ物のかすを洗い流す。
4)円滑作用:発音や会話をスムーズにする。
5)抗菌作用:抗菌作用を持つ物質で病原微生物に抵抗する。
6)ph緩衝作用:phを一定に保ち細菌の繁殖を抑える。
7)保護作用:歯の表面に皮膜を作りムシ歯を防ぐ

唾液の分泌場所

唾液は、血液をもとにして作られていますが、その生成機序はまだ解明されていません。通常、健康な人で1~1.5リットルもの唾液が1日に分泌されています。その唾液は、左右両側に一対ずつ存在する3種類の大唾液腺、耳下腺、顎下腺、舌下腺から主に分泌されています。

耳下腺

耳下腺は、最も大きい腺で、頬の皮膚のすぐ下で、顎の後端から耳の下のあたりにあります。
耳下腺でできた唾液は、管を通り上顎の第二大臼歯あたりの頬粘膜にある穴から口中に分泌されます。口を大きく開けて、ちょうど頬の裏側あたりを見てみると、直径2~3ミリほどのふくらみがあります。これが目下腺乳頭といって、目下腺の管があるところです。

顎下腺

顎下腺は、目下腺の半分ぐらいの大きさです。下顎の骨の内側で、口腔底の下にあります。顎下線から出た唾液は、やはり1本の管を通り、舌の下にある穴から口中に分泌されます。口を大きく開いて、舌を持ち上げ、その先を上顎につけると、真中のヒモが舌の裏をひっぱっています。その下のほうの盛り上がりが舌下小丘といい、顎下腺のあるところです。

舌下腺

舌下腺は、3つの腺の中でも最小で、顎下腺の20%くらいの大きさです。口腔底のすぐ下にあり、顎下腺の開口部の近くに数個から数十個に分かれて舌下腺唾液の管があります。

これらの唾液腺から分泌される唾液は、それぞれ性状が異なっています。

耳下腺唾液は、サラサラしていて水に近く、舌下腺唾液は、糸を引くような感じ、顎下腺唾液は、それらのちょうど中間ぐらいです。

自律神経との関係

唾液腺は、自律神経に支配されています。リラックスした状態で食事をすると、副交感神経が働いて、サラッとした唾液が出ます。そのためにスムーズに食事ができます。

ところが反対に、イライラしたり、ドキドキしたり、感情に起伏があると、交感神経が働き、ネバネバとした唾液が少し出ます。そのため、緊張すると食事がのどを通らなくなるのです。

傷を治す成分

唾液の中には、細菌に作用する物質が含まれています。

1.リゾチーム
細菌の細胞膜を破壊して殺菌したり、抗炎症作用もあります。涙液、乳汁などにも存在します。

2.ペルオキシターゼ
細菌の代謝産物と、唾液にあるロダン塩に触媒として働きます。そのときできた産生物が、細菌の代謝活動を阻害します。

3.ラクトフェリン
鉄イオンを吸着して、細菌が利用できなくなるので、発育が抑制されます。

4.免疫グロブリン(IgA)
細菌が細胞にとりつくための機能をなくしてしまいます。もともとは血液中にも含まれている物質です。

その他の働き

唾液の中には、血管の壁や血小板に存在する血液凝固因子であるトロンボプラスチンによく似た物質が含まれており、この働きで、止血作用があります。
またEGF(上皮細胞成長因子)が唾液中にあることで、傷口が早くふさがることがわかりました。
このことから、唾液には細菌からの感染を防ぎ、止血して傷の治りを早くする優れた作用があることが確認できます。

その他には、血液型判定、喫煙検査、そして最近では唾液で身体の状態を調べる試みが行われており、唾液の研究も進みつつあります。

(参考:唾液の科学 石川達也、高江洲義矩監修)

私は梅干しを見ると食べなくても唾液が出るのですが、皆様はいかがですか

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