アズノール(カミツレ由来成分)

昨日、血豆の投稿をした際にアズレン系のうがい薬が勧められていることを記しましたが、今日はアズレンについての情報を投稿させていただきます。

カミツレについて

アズレン含有の製剤としてはアズノールがありますが、アズノールは、古くからヨーロッパで民間薬として使用されていたキク科植物カミツレの有効成分であるカムアズレンの類縁体グアイアズレン(ジメチルイソプロピルアズレン)およびグアイアズレンの水溶性誘導体(アズレンスルホン酸ナトリウム)を含有した製剤です。

アズレン含有植物「カミツレ」は、オランダ語、ドイツ語の「Kamille」に由来しています。カミツレはヨーロッパ原産のキク科の薬用植物で、その頭花(キク科の花は、頭状花序をなした集合花であるので、このように呼ばれます)を乾燥してものが、民間薬として古くから用いられてきました。

カミツレは草丈60cmくらいになる1年草あるいは越年草で、南及び東ヨーロッパ、西南アジア原産の植物ですが、現在ではほとんど全ヨーロッパに分布しています。そして、民間薬として消炎、発汗、駆風の目的で胃カタル、感冒、腸カタル、生理不順に茶剤としてあるいは浴用剤として、約4000年前から使われています。古代ローマ人は、髪に艶を出したり、色をつける目的でシャンプーやリンスとして使用していたようです。ヨーロッパでは風邪、頭痛、下痢に対してカミツレの花に熱湯を注いで飲む風習があり、ビアトリクス・ポター著の「ピーターラビットのおはなし」にもカミツレを煎じて飲ませる話が載っています。

ドイツなど寒い地方ではドイツカミツレが、イギリスではローマカミツレが使われています。ローマカミツレにはアズレンを含まないので抗炎症作用は見られませんが、生理不順、消化不良などに鎮痛、駆風の目的で使われています。
日本でもカミツレの効用に注目して、スキンケア製品、ヘアケア製品、浴用製品などに有効成分が使われたり、ハーブティーやアロマテラピーのエッセンシャルオイルとして疲労回復、不眠などに効果的だといわれています。

カミツレの成分には、アズレン、ファルネセン、フルフラール、セスキテルペノイドなどの精油、サリチル酸、コリン、フィトステロール、脂肪酸、フラボン、ヘテロサイドなどが含まれていますが、主要有効成分は、頭花を水蒸気蒸留して得られる精油中のカムアズレンと呼ばれる青色油状のセスキテルペンです。これは抗炎症作用を持っているので、外用薬として火傷、アレルギー性皮膚炎などに用いたり、内服薬として胃炎などの消化器疾患に用いられています。

アズレン含有製剤

アズレン含有製剤は、グアイアズレンを成分とする外用剤(軟膏剤)、グアイアズレンの水溶性誘導体であるアズレンスルホン酸ナトリウムを成分とする内服剤(錠剤、細粒剤、徐放性製剤、含嗽剤)が上市されています。効能・効果も多彩で、グアイアズレンは湿疹、熱傷などの炎症性皮膚疾患に、アズレンスルホン酸ナトリウムは胃炎、胃潰瘍、口腔・咽頭疾患(咽頭炎、扁桃腺炎、口内炎など)に適応を有しています。

グアイアズレン製剤は「アズノール軟膏」の名称で1958年に炎症性皮膚疾患治療剤として承認され、医薬品再評価の結果、(1977年7月)湿疹、熱傷・その他の疾患によるびらん及び潰瘍に有効であることが認められました。

アズレンスルホン酸ナトリウム製剤は、内服剤による臨床的な検討を経て「アズノール錠」の名称で1960年に急性・慢性胃炎及び胃潰瘍などを効能とする医薬品の承認を受け、医薬品再評価(1983年4月)の結果、胃潰瘍、胃炎における自覚症状及び他覚所見の改善を効能として有用性が認められました。また同時に含嗽剤として、咽頭炎、扁桃腺炎、口内炎、急性歯肉炎、舌炎及び口腔損傷に対する効能の有用性が認められました。  (参考:日本薬剤師会雑誌第52巻6号)

ちなみにカミツレはヨーロッパではカモミールと呼ばれ、古くから民間薬として広く使われています。

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