日本の冬の特徴は寒さと空気の乾燥で、これらが身体に大きな影響を与えます。
寒さの影響
寒さは私たちの身体にとって大きなストレスとなり、まず循環器系に影響を与えます。寒さに対して体温を上げなければならないので、心臓にかかる負担が他の季節より大きくなります。
心臓病の悪化は夏の熱帯夜の頃を除けば、大半が12月から3月に集中し、心不全、心臓弁膜症、心臓喘息の持病のある人は悪化しますし、急性の心臓発作を起こしやすいのもこの頃です。
また、寒さから身体を防御するために毛細血管が収縮し、そのため血圧が上昇します。結果として脳卒中の発生率も高くなり、11月半ばから4月の半ばに集中して起こりやすくなっています。
心臓疾患も脳卒中の発作も寒波が4~5日続いた後に起こりやすく、空腹時より満腹に食べた後に起こりやすい傾向があります。
循環器の次に寒さは腎臓、膀胱系に影響を与えます。冷えによってお小水が近くなったり、夜間排尿の回数が増えたり、むくみやすくなり、膀胱炎を起こしたり、腎炎、ネフローゼなどの腎疾患は悪化しやすくなります。
漢方では腎は冬に属し、骨や腰もみな腎の統括下にあると考えるのですが、リウマチ、関節炎、腰痛なども悪化しやすくなります。リウマチや関節炎の悪化は寒さの他、低気圧、高湿度が影響しているので、寒冷前線通過時には顕著に症状が悪化します。漢方では寒さによって病気が引き起こされた場合を寒邪に犯されるといい、リウマチ、神経痛、腰痛などの持病を持ち、冬の寒い頃に悪化するようであれば、病因を寒邪と考え、附子剤などで温める方法がとられます。
また、日頃のぼせ症の人は足元が冷えると、のぼせやすくなります。特に子宮筋腫などで子宮や卵巣を摘出してしまっている人は温度調節が効きにくいので、一層ひどくなる傾向があります。このようなタイプの人は床暖房や電気カーペットで暖房するのがよく、漢方薬の桂枝茯苓丸や桂枝加竜骨牡蠣湯などで気を下げるとよいでしょう。
また、末端の血行も不全となるので、アカギレやしもやけになりやすくなります。
乾燥の影響
冬場の乾燥は暖房が普及するようになって一層ひどくなりましたが、この空気の乾燥は水虫などのジュクジュクする皮膚病にはよいのですが、鼻、喉、気管、目など、普段体液で潤っていなければならない粘膜組織の抵抗力を弱めてしまいます。冬にインフルエンザが流行し、梅雨時や夏場に流行しないのは、まさにこの理由によるものです。鼻粘膜や咽喉や気管の粘膜が十分体液で潤っていれば、ちょっとしたウィルスや細菌などは受けつけないのです。そのため、冬場のインフルエンザの流行は雨が2~3日続けて降ったり、雪が降ったりすると、流行が止まります。
また同様に目の粘膜も弱っているので、ちょっとしたゴミや細菌によって炎症を起こしやすく、ドライアイにもなりやすくなっています。
漢方薬としては、喉の乾燥や痛みなどには、銀翹解毒丸や駆風解毒湯などを用い、目の乾燥や充血には杞菊妙見丸や黄連解毒湯などを用いるとよいでしょう。この時期に血をきれいにして鼻、咽喉、気管、目などの粘膜を丈夫にしておかないと、この後の時期に待っている花粉症に悩まされることになります。毎年花粉症に苦しむ人は、12月頃から砂糖を中心とした甘味料や動物性脂肪の摂取を極力減らしておくとよいでしょう。